芦屋市立美術博物館へ

9月20日より開催中の特別展「山崎隆夫 その行路―ある画家/広告制作者の独白」を拝見しました。山崎隆夫氏は、国画会を中心に活躍した洋画家であると同時に、戦後広告界を牽引したことでも知られています。三和銀行や当時の寿屋(現・サントリーホールディングス株式会社)などで手掛けた数々の広告は、いまも多くの人々の記憶に残っていることでしょう。
本展は山崎氏の生誕120年を機に、洋画家としての「絵画」と、広告界における作品の双方からその業績を通観できる貴重な機会となっており、異なる二つの領域で揺るぎない実績を築いた歩みを、一望することができます。
中でも印象に残った作品は、1988年に描かれた油彩画「芦屋川」。阪神芦屋駅近くから山側を望む風景を描いた一枚には、師・小出楢重氏と過ごした時間や、芦屋の街に抱く深い思い出が静かに刻まれているようでした。
また、幼い頃にテレビで目にしたトリスウイスキーのマスコットキャラクターなど懐かしい映像を拝見し、時を越えて当時の空気を味わったような不思議な感覚に包まれました。
洋画家と広告制作者、二つの顔を自在に行き来し、創造の世界を切り拓いた山崎隆夫氏。本展ではその軌跡をたどることで、戦後の日本の美術と広告文化の豊かさ、そしてそこに息づく人間の創造力の力強さをあらためて感じることができました。
この展覧会は11月16日(日)まで開催されます。